
結論からお伝えします。
空き家・留守宅を放置すると、湿気・埃・餌(紙・木・食品残渣)・隙間がそろい、ゴキブリ・シロアリ・ダニ・ネズミ・コウモリ等の温床になりやすくなります。発生・侵入を「起こさない」「広げない」ことが最優先です。本記事では出やすい害虫・害獣の実像と、今日からできる予防・初期対応・法令上の注意点を、実務の順番で解説します。なお、本記事は一般的な知見と法令情報をもとに編集していますが、重度・広範な被害は必ず専門業者に相談してください。空き家の適正管理は、行政の指導対象にもなり得ます。
“まずやる”のは発生源づくりを止める:湿気・餌・隙間対策
発生の三大要因は湿気・餌・隙間です。月1回以上の換気・通風、床下や水回りの結露・漏水点検、紙類・ダンボール・木材の屋内外放置を避け、建物外周の落ち葉・残置木材を撤去し、基礎や外壁のひび割れ補修で侵入路を塞ぎます。とくにシロアリは高湿・木材・ひびに引き寄せられるため、周辺の整理・換気・水漏れ修理・木部の土接触回避が重要です。
出やすい害虫①:ゴキブリ(不衛生環境の“サイン”)
兆候とリスク
排水口・家電裏・ダンボール内に潜み、糞や独特のにおい、茶色い卵鞘が痕跡です。アレルゲン・病原体媒介の懸念があり、空き家の水封切れ(トラップ内の水が蒸発)で下水側から侵入が増えます。検知・予防は清掃・乾燥・隙間封鎖・見回りが基本です。
予防・初期対応
月次の通風・通水で臭気・侵入を抑え、ベイト剤や粘着トラップでモニタリング→局所的に薬剤。燻煙剤は取説の用法・用量を厳守し、近隣やペット・感受性の高い方への配慮を徹底します(家庭用殺虫剤は表示・注意事項を守ることが前提)。
出やすい害虫②:シロアリ(資産価値を直撃)
兆候とリスク
蟻道・羽アリの発生、床の沈み、建具開閉の渋さがサイン。梅雨時期は活動が活発で、木材やダンボールが長期放置されるとリスクが跳ね上がります。
予防・初期対応
外周の有機物撤去、基礎・外壁のひび補修、床下換気、水漏れ修理が王道。兆候があれば専門調査→最適工法(ベイト/バリア/部分処理等)を選択します。費用は建物条件に左右されますが、被害の深刻化ほど高額化するため、早期対応が経済的です。
出やすい害虫③:ダニ・チャタテムシ・ムカデ等(湿気がトリガー)
兆候とリスク
長期不在で湿度が高止まりすると発生しやすく、アレルゲン化や刺咬被害で生活の質を下げます。
予防・初期対応
乾燥・換気・掃除(天井→壁→床の順)、寝具・布類の密閉保管、侵入路の隙間目張りが有効です。再発する場合は専門家の総合的有害生物管理(IPM)に切り替え、発生源・侵入経路の是正を優先します。
出やすい害獣①:ネズミ(配線被害・衛生リスク)
兆候とリスク
天井裏の走行音、柱・配線の齧り痕、黒っぽい糞。衛生害獣としての管理は侵入防止・清掃・捕獲を組み合わせたIPMが推奨されます。
予防・初期対応
5〜6mmの隙間でも侵入するため、通気口・配管周りの金網化・目地充填・樋や軒先の欠損補修が肝。粘着シート等は設置・回収・廃棄を適切に行い、食品やペットの安全に配慮します。定期点検の記録化も再侵入抑制に有効です。
出やすい害獣②:コウモリ・ハクビシン等(ここは法令注意)
兆候とリスク
軒天・シャッター裏・屋根スリットからの侵入・営巣。糞尿による臭気・汚損・衛生リスクがありますが、勝手な捕獲・殺傷は違法となる可能性があります。コウモリは鳥獣保護管理法の保護対象で、許可なく捕獲・殺傷で罰則(1年以下の懲役または100万円以下の罰金)。ハクビシンも許可や狩猟免許等が必要です。基本は繁殖期を避けた追い出し+侵入路封鎖を、法令順守の専門業者に依頼してください。
“やってはいけない”危険行為と、法令順守のポイント
家庭用殺虫剤の使用
ラベル・取説の用法用量厳守、保護具、換気、保管・廃棄は必須。混用や漫然散布は避け、近隣への飛散・健康影響に最大限配慮します。
農薬等の使用
住宅地での散布は無風〜微風・飛散低減ノズルの活用・風向配慮など、農林水産省の通知に沿った慎重な実施が必要です。現地混用の禁止等の留意点も明示されています。
野生鳥獣の扱い
許可なく捕獲・殺傷しない。自治体窓口または適法な駆除業者に相談し、追い出し・遮蔽中心の方針を取ります。
行政リスク:適正管理は“義務感覚”で
2023年改正の空家等対策特別措置法で「管理不全空き家」が新設。放置して衛生・景観上の問題を生じさせると、助言→指導→勧告→命令の行政措置が早期段階から及ぶ余地が広がりました。害虫・害獣の横行は管理不全のサインになり得ます。定期清掃・除草・通風通水・修繕で予防線を張りましょう。
実務フロー:今日からのチェックリスト(最短ルート)
1)毎月の基本ルーティン
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通風・通水(全室/全水回り)
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清掃・乾燥(排水口・家電裏・収納内部まで)
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トラップ確認(ゴキブリ・ネズミのモニタリング)
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外周点検(落ち葉・木材撤去、基礎や外壁のひび補修)
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ポスト・周辺の整理(生活感の維持、空き家感を出さない)
2)半期〜年1回の強化点検
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床下・屋根裏のカメラ点検(侵入・営巣・配線齧り)
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防虫・防獣の遮蔽強化(金網・ブラシ・シーリング)
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専門家点検(IPM発想の総点検・記録化)
3)兆候が出たら
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軽微なら局所是正(発生源除去・乾燥化・封鎖)
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広域・反復なら専門業者(現地調査→見積→作業→アフター)
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費用感の目安を把握して意思決定(例:シロアリは坪単価、ハチの巣は規模・場所で変動)
まとめ:空き家管理は“衛生×法令×資産”の三位一体
害虫・害獣は「結果」であり、「原因」は管理密度の低下です。湿気・餌・隙間を断ち、点検→記録→是正のサイクルを回せば被害は抑制できます。併せて、鳥獣保護管理法・空家法等の法令順守と、近隣への配慮(飛散・臭気・景観)は欠かせません。資産価値の毀損を防ぎ、次の活用・売却・転貸の選択肢を広げるうえでも、“起こる前に手を打つ”が最短です。
空き家活用チームRへお気軽にご相談ください
「遠方で通えない」「天井裏の音や糞が心配」「シロアリかも?」——そんな不安や、法令面のグレーを自力で判断するのは難しいものです。全国の空き家を価値ある不動産に変える『空き家活用TEAMR』は、
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現況調査(衛生・構造・法令リスクの整理)
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IPMにもとづく発生源対策・遮蔽設計
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適法な専門業者コーディネート(鳥獣案件を含む)
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その後の管理代行/活用(賃貸・転貸・売却)設計
までをワンストップで伴走します。まずは状況をお聞かせください。“不安の芽”が小さいうちに一緒に摘み取り、資産の可能性へつなげます。
※本記事は一般情報の提供であり、個別の法的助言ではありません。重度の被害・野生鳥獣の関与・薬剤使用の是非は、自治体窓口や有資格の専門家へご相談ください。