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空き家を50棟以上管理していて思うことー空き家の本質ー

はじめに

空き家を50棟以上管理して感じることを率直に言えば、「持つだけ」では資産にならないということです。むしろ維持コスト・リスク・対応負荷が重く、活用戦略をもたずに放置すると負債に転じる可能性すらあります。
以下、TEAMRが長年の経験から挙げる「空き家の本質」を5つお伝えします。

1|維持コスト/管理負担は想定の何倍にもなる

空き家を運営していて、毎年あるいは月々発生するコストは軽視できません。
たとえば、定期点検、清掃、消耗部材交換、法定検査、修繕、保険、除草、草木伐採、水道・ガス・電気停止や保守管理、警備・防犯措置などが継続的に必要です。

こうしたコストをきちんと把握せず、「放っておけばいい」と考えると、赤字が膨らみます。
特に複数棟を抱えていると、管理の手間・コストの積み重ねで気づくとキャッシュアウトが大きくなることがあります。

また、外部に管理を委託する場合も、プランによって月額5,000円~10,000円程度が一般的という事例が多く見られます 。
しかしこれは「最低限の見回り・清掃」程度であり、建物補修や設備故障対応は別途見積もりというケースがほとんどです。

このコストを無視して始めると、資金繰りを圧迫する可能性があります。

2|劣化・老朽化のスピードは体感以上に速い

空き家は人が住んで使っている家屋とは劣化の進み方が違います。湿気、結露、カビ、木部腐朽、シロアリ被害、屋根・壁のひび割れ・雨漏り発生、外壁・屋根材の経年劣化などが進みやすいのです。

特に換気不足は死活問題です。空気が滞留すると湿気が木材内に残り、カビや腐朽を早めます。
また、長期間水道を動かさないことで配管内の劣化やつまり、漏水事故などのリスクもあります 。

定期的な建物点検、屋根・軒・外壁・雨樋のチェック、配管設備の確認、シロアリ予防などを怠ると、あるとき突然大修繕が必要になるケースもあります。私自身、「見える傷」は放っておくと手のつけようがなくなる経験を何度もしました。

このため、少なくとも年に1回~2回、あるいは季節替わりに点検を行うことを強く勧めます。

3|法制度・規制の変化に対応し続ける必要性

空き家を管理する上で最も注意すべきは、法律・制度の変化です。以下のような制度を知らず、後手を踏むと所有者に不利益が及びます。

特定空き家・管理不全空家制度

「空家等対策の推進に関する特別措置法(空き家法)」によって、適切に管理されていない空き家は「特定空き家」に指定され、行政から指導・勧告・命令を受けることがあります 。


指定されると以下のような不利が生じます:

  • 住宅用地の固定資産税軽減が外され、税負担大幅増加(最大6倍になるケースも)

  • 自治体による強制的な改善命令、または最悪は行政代執行(解体など)が実行され、その費用を所有者が負担

そして2023年改正法では、管理不全空家 という概念が導入され、まだ「特定空き家」になっていない物件でも「将来的に指定されうる状態」とみなされる空き家に対して改善を求められる可能性が出てきました。

管理不全建物管理命令(民法改正)

さらに、民法の改正により、所有者の管理義務が著しく不十分と認められれば、利害関係者の請求により裁判所が管理命令を出し、管理人を選任する制度も導入されました。
この場合、管理人に支払う費用が所有者に課せられるなど、実質的なコントロールを奪われる可能性があります。

このように、法制度や税制度は動いており、所有者として「ただ持っている」だけでは済まなくなっています。これを無視すると、思わぬコストや強制力にさらされます。

4|近隣トラブル・リスク管理の重さ (想定外ケース多数)

空き家の管理では、「モノを守る」だけでなく「トラブルを未然に防ぐ」責務も非常に重いです。

主なリスク例を挙げると:

  • 飛来・落下物:屋根瓦・外壁・樋の劣化部材が落下し、歩行者や近隣物件を傷つける可能性

  • 越境樹木・雑草:隣地敷地に枝や根が侵入し、近隣と揉める

  • 不法侵入・不法滞在:放置空き家がホームレス・不審者の拠点となることも

  • 放火リスク:空き家は放火対象となる確率が高く、火災が連鎖すれば大きな損害に

  • 害虫・害獣:庭木・雑草を放置すると害虫・ハチ・ネズミ・シロアリが繁殖

  • 水漏れ・雨漏りによる隣室浸水被害

もしこれらの被害が他人に及べば、所有者責任(民法上の不法行為、工作物責任、相隣関係)を問われる可能性があります 。

私自身、管理していた物件で外壁の木材が剥がれそうになっていたケースや、不法投棄が頻発したケースを経験しました。こうした事態発生後の対応・クレーム処理には心労と対費用がかかります。

このため、日常的な見回り、近隣とのコミュニケーション、異変察知体制、防犯カメラ・アラーム設置などが不可欠です。しかし、あまりこういったことは実現できていないのが現実です。

5|活用・出口戦略を描いておかないと「持たされるだけ」の物件になる

最後に最も痛感するのは、活用または出口を見据えていないと、持たされただけの物件になるということです。

空き家をただ維持するだけでは利益を生みません。以下のような選択肢を常に視野に入れておくべきです:

  • 賃貸活用:住居、シェアハウス、民泊(法規制確認要)

  • 事業用活用:店舗、倉庫、オフィス、貸ギャラリー等

  • 駐車場・倉庫用地転用

  • 売却:市場性・需要を見て早め売却を検討

  • 除却(解体)して更地売却:但し解体コスト負担を見込む

  • 事業譲渡・運営委託:活用プランだけ外部専門に任せる

特に複数棟を管理していると、将来性のない物件が足かせになり、資金・人員のリソースを食いつぶすことになります。
「持っているから使う」ではなく、「どう使わせるか・どう手放すか」が肝です。

加えて、活用時には用途変更・建築制限・耐震基準・消防法適用など注意が必要です 。


まとめ

空き家を50棟以上管理している立場から言えば、空き家は「負動産」から「不動産」にするために、どうしてもコスト・リスク・運営責任を抱える存在だと感じています。
「手放すべきところは手放し、見込みあるところは活用に乗せる」視点を持たないと、手枷足枷すら感じることになります。

もし、あなたが空き家を所有していて「どうすべきか迷っている」「適切な管理や活用を任せたい」と感じているなら、空き家活用チームRにぜひご相談ください。
チームRは、全国の空き家を“価値ある不動産”に変えるプロフェッショナル集団です。状態診断、活用プランの作成、管理代行、売却支援などをワンストップで対応できます。あなたの空き家を“悩み”から“資産”へと変えるお手伝いをしますので、お気軽にお問い合わせください。