初めての空き家調査で見えた「活かす力」
「空き家」と聞くと、どんなイメージを思い浮かべますか?
人が長く住んでいない、古くて暗い、ホコリだらけ…。
そんなネガティブな印象を持っている人が多いのではないでしょうか。
私自身、TEAMRのサポートメンバーとして初めて空き家の現場に入るまでは、正直そんなイメージを抱いていました。
今回レポートするのは、茨城県水戸市内にある築約45年の木造スレート葺の戸建て住宅です。
昭和54年に新築され、空き家となってからはおよそ1年が経過しています。
「荷物が散乱しているのではないか」「カビ臭が強いのではないか」
そんな不安を胸に、現地を訪れました。
便利さに潜む「ちょうどいい田舎」の魅力
この物件は、バイパスから少し入った場所にあります。
徒歩数秒のところにコンビニ、徒歩3分で図書館と公園、5分で中学校、小学校までは10分。
さらにホームセンターや家電量販店も徒歩圏内にあり、生活には十分に便利な立地です。
周囲には新築戸建てや新しい集合住宅が立ち並び、街並みは整っています。
「ここなら、ちょっと手を入れれば住みたい人はきっといる」
空き家なのがもったいないほどの立地だと感じました。
だからこそ、もしこの家が放置されていたら、近隣の方にとって大きな負担になっていたでしょう。
新しい家が並ぶエリアに、ひとつだけ荒れた空き家があると、街の印象も変わってしまいます。
改めて、空き家活用の意義を実感しました。
玄関を開けると感じる「残された生活」
玄関のガラスの引き戸をそっと開けると、かすかに木の香りがして、ほんのりと湿った空気が漂ってきました。
正直なところ、ゴミが散乱している光景を覚悟していましたが、実際には床にゴミひとつなく、比較的きれいな状態でした。
置かれている家具や小物が、確かに人が暮らしていた時間を物語っています。
玄関すぐの和室には昔ながらの神棚がありました。
古いタンスと、祖母の家でよく見かけるような食器棚。
扉を開けると中は空でしたが、その佇まいからは、確かに人の暮らしが感じられます。
キッチンには小物が少し残されており、まるで「またすぐ戻るつもりだったのかもしれない」と思わせます。
冷蔵庫を開けると中は空でしたが、少し匂いがこもっていました。
洗面所には懐かしい二層式の洗濯機があり、その上にはタオルが無造作に置かれていました。
浴室は水色のタイルがレトロな雰囲気で、デザインこそ古いものの、清掃されれば十分に使えるもの。
私自身も子どもの頃、こうしたお風呂に入っていたことを思い出し、どこか懐かしい気持ちになりました。
二階に残された思い出の痕跡
この家には増築されたと思われる二階があります。
階段を上がると、廊下のはじまりがスロープになっていて、増築の痕跡を感じました。
二階はおそらく子供部屋だったと思われます。
ボードゲームやペットボトルで作られた工作が残っており、当時の暮らしぶりが想像されました。
まだ使えそうなこたつ、たぬきの置物、フクロウの置物、蔵王と書かれた風鈴ーきっと旅行のお土産なのでしょう。
押し入れを開けると、布団がそのまま残されていて、ブラウン管テレビも置いてありました。
「私の家も昔はこれだったな…」と、思わず遠い記憶がよみがえります。
押し入れの天井には薄いベニヤ板でふさがれた点検口があり、風で「ガタッ」と開き、思わずドキッとしたのも現場ならではの体験です。
壁にはジャイアンツのカレンダーが残っていて、誰かの“推し”の熱も、まだこの空間に残っているようでした。
庭にも「活かせる資源」
庭には使われていない井戸があり、しっかりと蓋がされていました。
その上に室外機が無理やり置かれていたのが、どこかユニーク。
私の自宅にも井戸があり、改修してポンプを設置し、現在も活用しています。
この物件の井戸も、手をかければ地域資源として活かせる可能性があると感じました。
外の物置にはスキー板などが複数残されており、この家の家族が冬にはスキーを楽しんでいたのかもしれないと想像が膨らみました。
庭は広くはありませんが、雑草は少なく、駐車スペースは2台分確保できる状態。
全体として「きちんと守られてきた空間」だと感じました。
所有者様の思いと、現場のリアル
この家の所有者さんは50代後半から60歳くらいの方。
最初は空き家相談として話が始まったそうです。
借り上げか買取か、両方の選択肢を提示し、最終的には買取となりました。
「残置物処分とハウスクリーニングで約35万円ほどかかる見込みです。
普段お願いしている業者さんは、障子や網戸の補修も一緒にしてくれます。
地方の戸建ては実質利回り20%程度は確保したいところですね。」
関さんは淡々と語りながらも、一棟をどう活かすかを真剣に考えていました。
1階のトイレの床が少し沈んでいるため補強する予定で、洗濯機の水栓の交換も検討しているそうです。
「障子は多少黄ばんでても、やぶれてなければそのまま貸し出すこともあります。」 と笑う関さんを見て、
空き家は“全部を新品にすること”がゴールではない、と気付かされました。
例えば5年で元を取り、賃貸物件として投資家に売却すれば、300万円程度での販売も可能になるとのことでした。
借主がすぐに見つかるか気になり、空き家活用を担当するカナさんに聞いてみると、
「借主さんはすぐに見つかると思います!」と笑顔で話してくれました。
ペット可など条件を柔軟にして、アットホームに掲載して募集する予定だそうです。
空き家は「つながる未来」になる
もしこの家が5年、10年と放置されていたら、庭の草は伸び放題になり、ゴミが増え、害獣が住み着いていたかもしれません。
しかし、今回のように残置物の撤去とハウスクリーニングだけで貸せる状態を保てていたからこそ、空き家が“負動産”ではなく“資産”として生かせます。
空き家は、きちんと管理されていれば、活用の選択肢がぐっと広がります。
放置しないことで“つながる未来”を築くことができると、改めて感じました。
空き家を地域資産へ
放置されれば負の遺産となる空き家も、適切に管理し、必要な手を加えることで、地域の資産へと変わります。
初めて現場に立ち会い、空き家は「負」ではなく「誰かの思い出」であり、そして「誰かの新しい暮らしを支える場所」になると実感しました。
今の子どもたちが大人になる頃、こうした家が地域資源として活かされている未来であってほしいと願っています。
TEAMRでは、一棟一棟を丁寧に扱い、無理なく着実に「使ってもらえる家」にすることを大切にしています。
TEAMRが動かしているのは、ただの不動産ではなく、人の暮らしそのものです。
これからも現場のリアルをお伝えしていきますので、ぜひ今後の活動にご期待ください。
TEAMR 運営サポートメンバー 鈴木 裕子
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