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収益は低くても残したい!水戸の由緒ある家【TEAMR現場レポート】

水戸市空き家
水戸市常磐町の空き家

「いつか子供が戻ってくるかもしれない」 そんな思いで手放さずに守ってきた家があります。

茨城県水戸市常磐町にある築約50年の一戸建て。

TEAMRのカナさんと一緒に、貸し出す直前のその家を訪ねました。

一見すると、畳もふすまも張り替えられていて、キッチンやトイレも新しく、とても空き家だったとは思えないほどきれいです。

でも、こうして「誰かに住んでもらえる状態」にするまでには、

所有者さんの想い、 雨漏りという大きな壁、 そして、修繕費という課題がありました。

空き家は放置されれば、たった1〜2年でも驚くほど傷みが進行します。

特に雨漏りは、構造体にまで影響すれば修繕費は膨らむ一方です。

この家も実際、2カ所の雨漏りを修繕するのに大きな費用がかかりました。

それでも「売りたくない」「いつか戻るかもしれない」。

そんな所有者さんの気持ちに寄り添い、再び人が住める家にする。

その現場で感じた“空き家を活かすリアル”をお伝えします。

古い地方都市が抱える現実

今回訪れたのは、茨城県水戸市常磐町にある一戸建て住宅です。

立地はとても恵まれていて、水戸駅までは車で8分ほど。

千波湖までは車で5分、由緒ある常磐神社へも徒歩で7分と、自然や歴史に囲まれたエリアです。

偕楽園と千波湖
偕楽園と千波湖

この家は、水戸の誇る梅の名所「偕楽園」の表門へと続く好文亭表通りから、少し入った場所にあります。

好文亭表通りは、偕楽園の表門へと参詣客が行き交い、季節の移ろいを感じながら散策できる、風情ある通りです。

好文亭表通り
好文亭表門

この由緒ある道から少し奥に入ると、表通りの賑わいとは対照的に、どこか時間が止まったような空気が流れていました。

周辺には新しい家は少なく、昔ながらの古いアパートや住宅が点在しています。

ところどころに、草に埋もれるようにしてひっそり佇む空き家があり、古い地方都市が抱える現実を目の当たりにしました。

便利さと歴史的な趣きが共存するこの場所が、なぜ空き家を生んでしまうのか。

駅からも比較的近く、偕楽園という観光資源にも恵まれているのに、なぜ人が住まなくなってしまったのか。

街並みを歩きながら、そんな疑問が頭をよぎりました。

このエリアに空き家が増えていけば、歴史ある好文亭表通りの雰囲気も変わってしまうかもしれない。

一軒の空き家をどう活かすかは、地域全体の景色を守ることにもつながっている。

そんな思いで、私はこの家の玄関の扉を開きました。

残された空き家に息づく「家族の時間」

空き家の玄関扉
重みのある玄関扉 どんな空間が広がっているのか、ワクワク

扉を開けたとたん、畳の新しい香りがふんわりと迎えてくれました。

すでに荷物はすっかり片付けられていて、 埃っぽさやカビ臭はなく、 思っていたよりもずっと清々しい空気が漂っていました。

貸し出し準備が進んでいるとはいえ、古い戸建てに足を踏み入れるときの独特の不安がありましたが、 少し肩の力が抜けました。

室内を進むと、張り替えられたばかりのふすまが白くまぶしく、 押し入れの中もクロス貼りできれいに整えられています。

ところどころに「しっかり手をかけた跡」が見え、 所有者さんとTEAMRの関さんやカナさんがこの家を“生かす”ために動いてきた時間が垣間見えました。

張り替えられたふすま
ふすまが白くてまぶしい…!

今回の所有者さんは、小学生のお子さんがいる現役のパパです。

この家はもともと、所有者さんのご両親が暮らしていた家で、 お二人が亡くなられた後、受け継ぐことになりました。

「将来、子どもが大きくなったら、もしかしたらこの家に戻るかもしれない…」

そんな想いがあって、売却ではなく賃貸として残す選択をしたそうです。

もちろん、手放してしまえば固定資産税の負担も、管理の手間もなくなる。

でも、思い入れのある実家を簡単に切り離すことができなかった。

その決断の背景には、家族の歴史をつなぐ“家”としての役割が、まだ終わっていないという想いがあったのだと感じました。

「定期的に来ていたのに」雨漏りが教えてくれたこと

この家には、引き渡し前に大きな問題がひとつありました。

それが「雨漏り」です。

所有者さんは空き家にしてからも、時折足を運んで掃除をしたり、できる範囲で手を入れていたそうです。

しかし今回、貸し出すことを考えて詳しく状態を確認してみると、屋根からの雨漏りが2カ所見つかりました。

雨漏りした天井
雨漏りがあって修繕した押し入れの天井

雨水は、ただ天井を濡らすだけではありません。

構造材にまで染み込み、時間が経てば木を腐らせ、家そのものの寿命を縮めます。

見えないところで進む雨漏りほど、空き家にとって大きなリスクはないのだと、現場で改めて実感しました。

雨漏りが2ヶ所も見つかったため、修繕には予想以上のお金がかかりました。

「本音を言うと、正直この物件はあまり引き受けたくなかったんです」

そうカナさんが笑いながら打ち明けてくれたとき、私も思わず頷いてしまいました。

修繕にお金がかかりすぎれば、思うように利益は出ない。

空き家活用は「どんな物件でも必ず救えるわけではない」という現実を、この家が教えてくれた気がします。

それでも、駅に近く周辺環境が整っていること、

そして、所有者さんの想いを受け止めて「活かす」と決めたTEAMRの姿勢が、

この家を次の誰かにつなぐ力になったのだと思います。

スピード感が空き家を守る

雨漏りの補修を済ませ、畳を張り替え、洗面台やキッチン、トイレなど水回りも新しくされていました。

新しい洗面所とトイレ
洗面所やトイレは新しい!

二間続きの和室は光がたっぷり入り、とても心地よい空間でした。

二間続きの和室
日当たりが良く心地の良い和室

「DIY可」という募集条件もあり、

自分の手で好きなように手を加えながら住めると考えると、

「ここでDIYをしながら暮らしたら、どんな日々になるんだろう」と、思わずワクワクしました。

この家はきっと、新しい住み手の工夫や手入れによって、これからまた育っていくのだろうと感じました。

今回のように、荷物がある状態から貸し出す状態にするまで、長くても2ヶ月。

「どの物件もだいたい1ヶ月くらいで引き渡しできます」とカナさんは話します。

空き家活用で大切なのは「スピード感」。

放置されればされるほど、空き家は“負動産”になってしまいます。

雑草が生い茂り、ゴミが溜まり、雨漏りが進み、害獣が住み着き…。

そうなる前に動くことで、家は資産として地域に役立ち続けるのです。

空き家活用は「想い」と「手間」で守られる

今回見せてもらった物件は、礼金1.5か月・敷金なし・保証金なしで賃料49,000円。

バイク置き場・駐輪場も無料、ペット可、保証人不要、ルームシェアもOK、さらにDIYも可能という、柔軟な条件がそろっています。

空き家の庭
小さい車なら停められる庭

「賃貸に出す」という形で残せば、所有者さんの負担は軽くなり、家は誰かの暮らしの舞台として再び息を吹き返します。

空き家活用は『貸す』『売る』『維持する』――どの選択肢を選んでも、何よりも大切なのは“放置しないこと”。

そして、所有者さんの想いを叶えながら、地域の中で新たな役割を与えていくこと。

それを誰かが支えなければ、家は朽ちていく一方です。

今回のように、好文亭表通りのような歴史ある街並みの近くでも、空き家は静かに増えていきます。

この一軒を守ることが、周辺の環境を守り、地域の未来を守ることにつながる。

その現場のリアルを、肌で感じた時間でした。

管理することの大切さ

今回の物件は、定期的に管理がされていたからこそ、雨漏りの被害も最小限で済みました。

これがもし、誰も立ち入らず5年、10年と放置されていたら――。

放置された空家
放置した空き家の例

庭の草は伸び放題、ゴミが増え、害獣が入り込み、雨漏りは構造材を腐らせ、修繕のコストは膨れ上がっていたかもしれません。

空き家は、きちんと管理さえしていれば、利活用は十分に可能です。

残置物の撤去と掃除だけで済むうちに動くからこそ、空き家は“負動産”にならずに済む。

放置しないからこそ、つながる未来がある。

それが今回、改めて学んだ大きな気付きでした。

「守る人」がいる地域は変わっていく

私自身、TEAMRのサポートメンバーとして、まだ現場は2軒目。

けれど、空き家の裏にある所有者さんの思いや、地域が抱える事情を肌で知ることで、空き家を「ただの物件」としては見られなくなりました。

空き家を守るのは、誰でもない“人”です。

所有者さんの想いを汲む人、地域とつなぐ人、借りて活かす人――。

そうした人の手がある限り、古い家は新しい役割をまとい、地域の中で息をし続けてくれます。

次はどんな家に出会えるのか。

これからも現場のリアルをお伝えしていきますので、ぜひ次のレポートも楽しみにしていてください。

 

TEAMR 運営サポートメンバー 鈴木 裕子

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