TEAMR代表の関さん、空き家活用を担当するカナさんと一緒に、水戸市内に点在する複数の「活用中の空き家」をめぐりました。
この記事ではツアー後半でめぐった7件の物件を紹介します。
普通の住居として貸し出しているものもあれば、グループホーム、資材置き場、企業の社宅など、実に多様な使われ方をしている物件たち。
なかには、関さん自身がかつて暮らしていた家までありました。
空き家をどう活かすかー。
所有者さんと借主さん、それぞれの事情が交差しながら、新しい暮らしや役割が生まれている現場を追いました。
1. 築浅ゆえの高めの借受金額 ― 水戸市平須町の空き家

水戸市平須町にある築30年の物件。
契約期間は8年、借受金額は月32,000円、貸出金額は87,000円。
片付けや修繕には87万円をかけて再生されました。
築30年は「築浅」の部類
所有者さんは神栖方面に暮らしており、「管理できないので借りてほしい」と相談があったのが始まりです。
外観はとても綺麗で、庭も雑草がほとんどなく手入れされていました。
「借受金32,000円はTEAMRの中でも高いほう」と関さん。
築30年という“比較的築浅”の物件は、所有者さんの期待値も高く、見合った借受金額を提示しないと同意を得られないのだそうです。
市場感覚が活きる交渉
築浅物件は修繕費が抑えられる一方で、借受の初期条件は厳しめになることも。
そのバランスを見極める関さんの交渉力が光った物件でした。
2. 20匹の猫と暮らす家 ― 水戸市常磐町の空き家

次に訪れたのは、水戸市常磐町にある築51年の家。
契約期間は10年、借受金額は月5,000円、貸出金額は52,000円。
片付けや修繕には163万円を投じています。
低コストで借りられた理由
なぜこれほど安く借受できたのかというと、中の状態がかなり傷んでいたからです。
古さと劣化が目立つ物件でした。
猫カフェから自宅へ
借主さんは元・猫カフェのオーナー。
店を閉じたあと、今は20匹もの猫と暮らしています。
「20匹と一緒に住める家なんて、そうそう見つからない」と思わず納得。
空き家だからこそ実現できる暮らし方がここにありました。
雑草に覆われた庭の向こうに
外観と庭だけを見ましたが、庭は雑草が高く伸びていました。
その奥で、猫たちとの新しい生活が息づいている。
荒れた庭と賑やかな家の中。対照的な光景が印象に残りました。
3. 半年の暮らし ― 水戸市長岡の空き家

水戸市長岡にある築46年の家。
契約期間は8年、借受金額は月30,000円、貸出金額は60,000円。
片付けや修繕には5万円がかかっています。
たった半年の暮らし
当時、この家には所有者さんご夫妻と1歳のお子さんが住んでいたそう。
家を建てたものの、わずか半年で離婚してしまいました。
残された家は、その後空き家に。
家は人の事情で動かない
人にはそれぞれ事情があります。
でも、家はその事情によって動いたり消えたりするわけではありません。
一度建てた以上、責任を持って向き合う必要がある、と私は思います。
家は人の人生の影響を受けつつも、そこに在り続けます。
空き家活用は、使われなくなった家に再び役割をもたせる取り組みだと感じました。
4. 1,000円で借りて40万円で購入 ― 水戸市長岡の空き家

同じく水戸市長岡にある築49年の物件。
契約開始時は1,000円で借りて、月49,000円で貸し出し。
その後、40万円で買い取ったという経緯があります。
片付けや修繕には50万円を投じました。
固定資産税がきっかけ
「固定資産税が多くなってしまうからどうにかしたい」という所有者さんの声を受け、関さんが「それなら40万円で買い取りましょう」と提案。
こうして購入に至りました。
高利回りの実現
買い取り後も49,000円で貸し出しを継続。
関さんいわく「利回りはいい感じ」とのこと。
数字上は理想的な活用モデルといえます。
しかし草は伸び放題
ただ、周囲を見てみると草が生い茂っていました。
「どういうことなんだ?」と関さんも首をかしげる様子。
管理と収益性、その両立の難しさを物語る光景でした。
5. グループホームとして生まれ変わった家 ― 水戸市石川町

水戸市石川町にある築39年の物件。
借受金額は月15,000円、貸出金額は70,000円。
現在は福祉グループホームとして活用されています。
5DKの間取りが活きた
5DKの間取りを生かし、それぞれの部屋を独立させることでグループホームに最適化されました。
管理者さんが人工芝をDIYし、オシャレなテーブルセットを置いた庭は、整然としていて居心地の良い空間でした。
昭和の趣と地域の理解
建物外観は昔ながらの昭和の家らしい趣が残りつつ、清潔感が漂います。
ただ、貸し出しの際には近隣トラブルもありました。
グループホームとして貸し出す旨を伝えると、「そんなの聞いていない」と反発したお隣さん。
しかし自治会長さんは「気にしなくていい」と理解を示してくれたそうです。
地域との調整も空き家活用の現場では欠かせません。
6. 関さんが住んでいた家 ― 水戸市

築51年の家。
ここは関さん自身がかつて住んでいた物件です。
当時は10年以上空き家となっており、室内外ともに荒れ果てていました。
大掛かりな再生
塀が長く連なり、庭は庭石が埋もれるほどのジャングル状態。
外構工事、外壁塗装、屋根の葺き替えと大掛かりな工事を経て再生されました。
今では外観もきれいに整い、昭和の趣を残しつつ活気を取り戻しています。
離れを貸すという工夫
敷地内には2Kほどの離れがあり、水回りもすべて揃っていました。
関さんはそこを月4万円で貸し出していたとのこと。
「住みながら離れを貸す」という柔軟な発想に、思わず「さすが関さん!」と唸らされました。
7. 荷物置き場になった平屋 ― 水戸市谷田町

水戸市谷田町にあるこじんまりとした平屋。
庭もあり、車を停められるスペースも残っています。
現在は月1万円で貸し出され、資材置き場として活用されています。
空き家をトランクルームに
借りているのは、片付けを依頼しているハウスクリーニング業者さん。
以前片付けた空き家から出た洗濯機が、窓辺に置かれているのも見えました。
「月に何万円もかかるトランクルームより、広く使えて車も停められる空き家のほうがずっといい」
空き家を倉庫として再利用するメリットを実感できる事例でした。
8. 企業の社宅として活用 ― 水戸市谷田町

最後に訪れたのは、同じく水戸市谷田町にある築53年の物件。
借受金額は月5,000円、貸出金額は55,000円。
現在は企業の社宅として利用されています。
空き家が社員の住まいに
「社宅として空き家を活用するのもありなんだ。」
見学を通して新しい発見でした。
企業が借主となることで、安定的な利用が見込めるのも魅力です。
思わぬトラブルも
ただ、最近入居していた人が庭木を勝手に切ってしまい、会社から謝罪の電話があったそう。
思わぬトラブルも、空き家活用にはつきものです。
空き家活用が街に広げる可能性
今回のツアーで訪れた7つの空き家は、住居としてだけでなく、グループホームや社宅、資材置き場など多様な役割を果たしていました。
関さんはこう語ります。
「地域の相場を見て、いくらなら借主さんが見つかるかを考える。
例えば月4万円の利ざやがあれば、修繕に100万円かけても2年で回収できる。
1年で元が取れる物件もあるんです。」
数字の裏側には、それぞれの所有者さんや借主さんの事情があり、葛藤や決断があります。
空き家活用は、単なる不動産ビジネスではなく、人の想いや街の未来をつなぐ取り組みだと実感しました。
街を見渡すと、まだまだ活用されていない空き家が点在しています。
所有者さんが一歩踏み出せるように支援体制を整え、空き家を受け止め活かす仕組みを強化していくことが、地域の暮らしや資産を守ることにつながります。
TEAMRは、そんな空き家に新しい息吹を与える活動を続けています。
街の空き家に目を向け、小さな一歩を踏み出して、TEAMRと一緒に地域と空き家の未来をつくる一員になりませんか?
TEAMR 運営サポートメンバー 鈴木 裕子
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