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滞納と荒れた家を地域資産に戻すまで【TEAMR現場レポート茨城町長岡】

借主がいても、管理が届かないと家は傷む

空き家の問題は、「誰も住んでいない家」のことだけを指すと思われがちです。

「人が住めば家は大丈夫」と考える人も多いでしょう。

でも実際は、誰かが住んでいたとしても、きちんと管理や監視がされなければ、家はすぐに荒れてしまいます。

家賃が滞納され、室内の手入れがされないまま数年が過ぎれば、空き家と同じように周囲の景観が損なわれ、

隣近所の土地や家にまで影響を及ぼすこともあります。

今回私は、TEAMRのサポートメンバーとして、茨城県東茨城郡茨城町大字長岡にある一軒の空き家を訪れました。

茨城町長岡の空き家
借主がいたのに、手入れが届かず草木が伸び放題の長岡の家

この家は、かつては誰かの暮らしを支えてきた住まいです。

けれど、借主がいたにもかかわらず、庭は草木が生い茂り、室内は落書きと破れた障子に荒れた空気をまとっていました。

破れた障子と落書きされた壁
大事に守られてきた家だからこそ、この荒れた姿が悔しい

住んでいたはずの家が、手をかけないことでどれだけ傷むのか。

今回の現場は、それを目の当たりにしたリアルな一例でした。

茨城町長岡 — 便利さとのどかさが調和する街

今回の家があるのは、茨城県東茨城郡茨城町の長岡エリア。

最寄りの小学校・中学校まで徒歩30分前後。

最寄りのコンビニまでは徒歩圏内、近くにはイオンタウンもあり、日用品の買い物には困りません。

駅前のような喧騒はなく、昔ながらの一戸建てと畑や田んぼが混在するのどかな住宅地です。

しかし歩いてみると、古い住宅が取り壊されずに空き家のまま残されている姿も見かけます。

玄関先が雑草で埋もれ、誰も住んでいないことが一目で分かる家。

地域の人が手をかけている家と、そうでない家の差は一目瞭然です。

地域にとって、空き家は景観の問題だけでなく、防災や防犯のリスクでもあります。

「空き家が一軒放置されると、その周囲の空き家も増える」

そんな言葉を、真夏の強い日差しの下、汗をぬぐいながら現場を歩きながら思い出しました。

元入居者が残した爪痕 — 滞納と荒れた家

この家には、少し特別な事情がありました。

若い夫婦が住んでいて、その間にお子さんも誕生しました。しかし家賃の滞納は約2年間続きました。

保証会社の手により強制退去の手続きが進められ、1年4ヶ月前からは裁判も検討されていたそうです。

滞納だけではなく、室内の障子はボロボロにされ、壁にはお子さんの落書きがあちこちに残っていました。

庭の草木は手入れされないまま生い茂り、

猫を飼っていた部屋には強い臭いがこもっています。

生い茂った草木
玄関前の荒れた草木

現場に立つと、住んでいた人の暮らしぶりがにじみ出てくるようでした。

「草刈りも室内掃除もせず、夫婦そろってだらしなかった。」

TEAMR代表の関さんは、そう言います。

「こういう人は、前の物件でも滞納していたはずです。

前の大家さんや不動産屋さんを悪く言う人って、大体同じパターンです。」

「誰に貸すか」と「どう守るか」がどれだけ大切か、身にしみて感じました。

オーナーさんの思い — ここに誰かが住むかもしれない

この家を所有しているのは、60代のご夫婦です。

孫も数人いる、どこにでもいる優しいおじいちゃんおばあちゃん。

もともと「子どもがいつか住むかもしれない」という思いで、この家を購入しました。

しかし結局その可能性は薄くなり、貸し出す決断をしたといいます。

お宅に伺うと、必ずお茶とお菓子を出してくれるご夫婦。

滞納と荒れた部屋を前にして「迷惑をかけてしまって申し訳ない」と逆に謝ってくれる、そんな人柄です。

「こういう良い人の物件こそ、ちゃんと活かしたい」

そんな想いで、TEAMRは動きました。

平屋の魅力をもう一度

この物件は1979年に建てられた、築46年の平屋建てです。

とはいえ、この家には再生できる魅力が十分に残っていました。

まず、平屋で日当たりがとても良く、風通しがいいこと。

庭に面した広縁に座ると、心地よい風が抜けていきます。

室内には和室と洋室がふすまでつながり、

欄間や組子障子、雪見障子など、昔ながらの日本家屋の趣を感じさせてくれます。

二間続きの部屋
美しい欄間が残る一方で、障子は無残に破れたまま…
組子障子
丁寧に作られた、芸術的な組子障子

ただ、その雪見障子は今やすっかりズタズタに破かれ、

手をかけないまま時間が過ぎた爪痕が残っていました。

荒れている庭も、10坪以上の敷地があり、草を刈り整えれば、家庭菜園やガーデニングができそうです。

さらに駐車場も2台分確保でき、平屋でありながらも使い勝手の良さを感じます。

来客用駐車場
北側の広い駐車場

トイレやお風呂、洗面所も広く、暮らしやすさが随所に感じられます。

トイレとお風呂
広めのトイレと浴室

「ここなら、小さなお子さんがいても暮らしやすいだろうな」

そんな生活のイメージが自然と湧いてきました。

空き家の広縁
心地よい広縁に、破れた雪見障子が残る

それだけに、これほどまでに思いを込めて大切にされてきた家が、無残に荒らされてしまったことを思うと、

やりきれない気持ちになります。

草木と落書きが残すコスト — 修繕の現実

滞納中に荒れ果てた家を、もう一度「誰かが住める家」に戻すには、多くの修繕が必要です。

今回の修繕内容は、

・畳、襖、障子、網戸の交換

・割れているガラスの交換

・キッチン、洗面室の壁クロス張り替え

・砂壁の一部塗装

・ハウスクリーニング

・猫部屋の消臭・消毒

・庭の植栽伐採、除草

修繕費用は80万円以内に抑える計画です。

草が伸び放題の庭、破れた障子。

荒れた分だけ修繕が増えるという現実を前にして、思わずため息がこぼれました。

だからこそ、放置しないことの大切さをもっと伝えたいと強く思います。

DIY可だから広がる可能性

今回の物件も「DIY可」の条件で募集する予定です。

「自分の手で手を入れながら、家を育てたい人」が借りてくれれば、家も喜ぶでしょう。

「自分で壁を塗り替えたい」「庭を整えたい」

そんな暮らしの中の楽しみを求める人にはぴったりです。

平屋で段差が少ないので、小さなお子さんやペットとも安心して暮らせる家です。

家は人が住んでこそ生き返ります。

荒れた家の息を吹き返すのは、管理する私たちだけではなく、新しく暮らす人の手です。

利回り無限%からの再挑戦

この物件は、TEAMRが8年間借り上げています。

月3万円で所有者さんから借り、6万円で貸し出していました。

最初の入居時は修繕費ゼロでスタートしたため、いわゆる「利回り無限%」という状態でした。

しかし結果として滞納が続き、強制退去に至り、さらに修繕費がかかってしまった。

「初期費用ゼロだからこそ所有者さんには申し訳ない」と関さんは話します。

今後は修繕後に再募集し、残りの3年間も家賃6万円前後で貸し出す予定です。

放置していれば、草木は隣家にまで広がり、クレームの種にもなります。

腐食が進めば修繕費用は倍以上に膨らむ。

そうなる前に動けるかどうかで、空き家の価値は大きく変わるのです。

空き家管理は思いと仕組み

今回の物件は、保証会社がついていたからこそ裁判に踏み切れました。

さらに、所有者さんの協力があったおかげで、解決までをスムーズに進めることができたのです。

「でも、もし保証会社もなく、所有者さんが動けなかったら…?」

草木は伸び放題、家賃は入らず、室内も荒れ果てるばかり。

TEAMRのカナさんも「今回は保証会社に入っていて本当に良かった」と話していました。

もし保証会社なしで対応しようとしていたら、強制退去や滞納回収の手続きはもっと大変で、

TEAMRとしても負担が大きく、解決までにもっと時間と労力を要していたはずです。

家を貸し出すときには、入居審査だけでなく保証会社をつけることの大切さを、改めて感じた現場でした。

地域と家を「つなぐ人」が必要

空き家を再生するのは簡単ではありません。

滞納・放置・荒れた室内。

現実には「もう売ってしまいたい」と思う人の方が多いでしょう。

それでも「家族の思い」を残したいと願う人がいて、

「その思いを活かしたい」と動く人がいて、

「住んで育てたい」と思う人がいる。

そんな人のバトンがつながって、空き家は息を吹き返します。

庭の草を刈り、障子を張り替え、猫部屋を消毒して――。

大変だけれど、ここで新しく暮らす人の未来を想像すると、不思議とやりがいを感じます。

空き家活用に必要なのは、「放置しない」「管理する」そして「地域でつなぐ」こと。

それを現場で感じた今回のレポートでした。

物件情報まとめ

・茨城県東茨城郡茨城町大字長岡

・木造平屋建て 94.4㎡

・1979年6月築

・礼金1ヶ月 敷金なし 保証金なし

・DIY可 ペット可 駐車場2台

・イオンタウン近く

・賃料 59,000円

・保険要 2年15,000円

・賃貸保証加入要(初期費用賃料0.5ヶ月分/更新料10,000円/年)

おわりに

空き家は、人の思いと手でしか守れません。

ただ建物として残すだけではなく、そこにある家族の記憶や地域の景色をつないでいくのは、やはり人の力です。

今回も、信頼できる草刈り業者さんが朝早くから作業に入ってくれました。

真夏の強い日差しの中でも、何度も休憩を取りながら数日にわたり草刈りや庭木の枝をきれいに整えてくれたおかげで、

隣地にまで伸びていた雑草も片付き、家は再び「人を迎え入れられる家」に戻りつつあります。

伐採中の庭
猛暑の中で切り開く、新しい暮らしの土台

どんなに古い家でも、誰かの思いを受け止め、誰かの暮らしに生まれ変わることができます。

手間がかかっても、そのひと手間が空き家を救い、地域を守ります。

TEAMRは今日も、所有者さんの思いに耳を傾けながら、次に出会う空き家の物語をつないでいきます。

そしてその先には、誰かが安心して暮らせる未来があります。

空き家は、誰かが守れば未来につながる。

あなたの身近な空き家も、誰かの思いと手で息を吹き返すかもしれません。

 

TEAMR 運営サポートメンバー 鈴木 裕子

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