茨城県常陸太田市小島町。
四季の移ろいとともに表情を変える田園風景が一面に広がり、風が吹くたびに稲穂や草花が揺れる。
この地に、築50年以上の木造二階建ての一軒家があります。

長らく人が住まず、静かに佇んでいたその家が、今、新しい息吹を取り戻そうとしています。
きっかけは、TEAMRで活躍するカナさんとYouTubeチャンネルを運営している双子の妹ナナさん。
2階に住みながら、1階を民泊として運営するという挑戦が始まったのです。
昭和築・広々木造二階建てと歴史ある小島町での豊かな暮らし
広々とした木造二階建て、賃料45,000円の魅力
今回訪れたのは、昭和47年(1972年)に建てられた、どこか懐かしい外観の木造二階建て。
扉を開けると、玄関スペースが広がり、正面には二階へと続く木の階段。
下駄箱の上には、民泊に訪れた人へ向けた手書きのメッセージが飾られ、その文字が温かく出迎えてくれます。

室内には収納スペースが多く、暮らしやすさを感じさせます。
庭は10坪以上あり、季節の花を植えたり、ちょっとした家庭菜園を楽しむことも可能。
さらに、専用駐車場は3台以上停められる広さで、車社会の地域では大きな魅力です。

設備面も、風呂・トイレ別、洗面台付きで、プロパンガス仕様。
ペット可、事務所利用可、SOHO利用可と、使い道に柔軟性があります。
賃料は45,000円。しかも管理費・共益費・雑費が一切かからず、コストパフォーマンスは非常に高い物件です。

田園風景と歴史が織りなす小島町の豊かな暮らし
家の周囲には広大な田畑が広がり、夏にはカエルの合唱が響き渡ります。
夜には満天の星空が広がり、自然を身近に感じられる贅沢な環境です。
自然が好きな方にとっては魅力的な場所ですが、その分、虫も多く暮らしている点は覚悟が必要かもしれません。
この地域は自然豊かなだけでなく、古墳時代の歴史的な史跡も数多く点在しています。
全長100メートルを超える大型前方後円墳「星神社古墳」や、
江戸時代から知られる「梵天山古墳群」など、歴史を感じながら散策できる場所が身近にあるのも魅力のひとつです。
こうした悠久の歴史が、この小島町の暮らしに独特の深みを与えています。
また、地域を縦断するJR水郡線は、久慈川の流域を走り、四季折々の美しい車窓の景色を楽しめる路線です。

サイクルトレインの運行もあり、自転車と一緒に旅を楽しむことも可能です。
ただし、運行本数が少ないため、乗り換えや待ち時間の計画は欠かせません。
一方で、観光シーズン以外は比較的空いているため、落ち着いた旅を楽しみたい方にはおすすめの路線です。
自然・歴史・人との温かな交流が調和した暮らし
清らかな久慈川の水は地域の自然を潤し、自然と歴史が調和した暮らしやすい環境を作り上げています。
地域の人々は温かく、道ですれ違えば笑顔であいさつを交わし、自分の畑で採れた野菜をお裾分けしてくれることもあります。
都会ではなかなか味わえない人とのつながりを感じられるのも、この地ならではの魅力です。
一方で、生活の利便性を考えると、車は必須の交通手段です。
最寄りの小学校までは徒歩で約55分かかります(車なら約7分)。
また、スーパーまで車で約10分ほど。
移動の自由度を高めるためにも、自家用車の利用が欠かせません。
そんな利便性の中で、自然や歴史、地域の人々との温かな交流が息づくこの場所で、のびのびとした暮らしが待っています。
民泊に生まれ変わるまでのストーリー
民泊を夢見た大学時代
カナさんが民泊を始めたいと思ったのは、大学時代に受けた「ビジネスプランを考える」講義がきっかけでした。
講師からは「自分が本当に起業するつもりで取り組んでください」との言葉。
ちょうどインバウンド需要が高まっていた時期でもあり、
「自宅を民泊にするのが現実的で面白い」と直感しました。
しかし、現実にはハードルが高かったよう。
当時住んでいた千葉では物価や賃料が高く、戸建ての賃貸は高額でした。
ゼロ円物件も内見しましたが、扉すら開けられないほど荒廃した家ばかりで、思うように進みませんでした。
「空き家の成功事例」に出会う
物件探しが難航するなか、カナさんは空き家活用の成功事例を探し始めました。
そのとき目にしたのが、TEAMR代表でみらい不動産社長の関さんが運営する水戸の民泊「ラグナロック」の記事でした。
ラグナロック|茨城のヒト・コト・バ|いばらき移住定住ポータルサイトRe:BARAKI
「日本にはこんなに空き家があるのに活用されていない。このままでは未来が危うい」と強く感じていたカナさん。
「自分も何か動かなければ」――その思いで、「みらい不動産」に連絡し、現在の物件との縁がつながりました。
ちょうどその頃、空き家を日本一解決することを目指すTEAMRが立ち上がったばかり。
カナさんは「自分もこのチームの一員のように活動したい」と感じ、現在の取り組みが始まりました。
民泊の準備と物件との出会い
カナさんたちがこの物件に引っ越したのが2024年7月のことでした。
賃料は値下げしてもらい、なんと25,000円に。
そこからは準備の日々が続きました。
家具や内装を整え、虫対策や水回りの清掃など、運営に向けて少しずつ環境を整えてきました。
2階を姉妹の自宅とし、1階をゲスト用の民泊スペースに。
水回りは1階にしかないため、オーナーもゲストも同じ設備を使うルールを設けるなど、運営面の工夫も必要でした。
1階の和室は二間続きで、大人数の宿泊にも対応可能です。

また、共同キッチンにはゲストに喜ばれるかわいらしい食器が並び、
たこ焼き機やチーズフォンデュセットも用意されていて、楽しめる工夫が随所に施されています。
ウォーターサーバーも完備され、快適な滞在をサポートしています。


洋室にはスタイリッシュなテーブルセットが配置されており、落ち着いた空間でゆったりとお酒を楽しむことができます。

引っ越してからは慌ただしく片付けを進めるなかで、2階の断捨離も急遽はじめました。
なかなか民泊としての運営に踏み切れず、2025年6月にようやく消防署の許可がおりました。
続いて県の民泊申請を行い、2025年7月に正式な民泊許可を得ました。
民泊オープンとゲストとの交流
物件をエアビーに公開すると、わずか3日で予約が入り、公開から1週間で初めてのゲストと対面しました。
最初に訪れたゲストは大学生くらいの男女5人組でした。
彼らは家の広さや清潔さに感動し、「すごーい!広い!きれい!」と口々に歓声をあげていました。
そんなゲストの笑顔と喜びの声に、カナさんは「本当に頑張ってよかった」と涙ぐむほど嬉しさを感じたそうです。
準備期間の苦労や許認可取得までの長い道のりを振り返りながら、
彼女は「やっとここまで来られた」と満面の笑みを見せてくれました。
ゲストとの交流は単なる宿泊以上の価値を生み出しています。
地域の魅力を伝え、訪れた人々が地元の人たちと触れ合うことで、ここだけの特別な思い出が生まれています。
初回の宿泊が大成功だったことを示すように、カナさんたちは最高評価の☆5を獲得しました。
この評価は今後の運営の大きな励みとなっています。
民泊が地域にもたらす可能性
田舎に人を呼び込む拠点に
民泊としてオープンし、この家は都会や海外からの旅行者を迎える拠点になりました。
ここを訪れる人は、自然の中での暮らしや、地元で採れた野菜を使った食事を楽しめるでしょう。
また、近隣の人たちも来訪者を温かく迎えてくれる雰囲気があります。
民泊のゲストと地域住民との交流が生まれれば、それは旅行者にとってかけがえのない思い出になるはずです。
地方創生と空き家活用の好例
この事例は、空き家活用の一つの成功モデルになり得ます。
空き家問題は全国的な課題ですが、こうした取り組みは地域の活力を保つための重要な一歩です。
放置されがちな古い家が、民泊として生まれ変わることで、地域に新しい経済活動と人の流れが生まれます。
若い世代が地域に根付き、新たな経済活動を生み出すことで、地域全体の持続可能性が高まります。
常陸太田市にとっても、この取り組みは地域の魅力を発信する新しい窓口になるでしょう。
課題と向き合いながらの挑戦
もちろん課題もあります。
例えば、水回りの共有や設備の老朽化、交通の不便さなど。

そして何より、広い庭の雑草処理も大変な仕事の一つです。
夏になると雑草が勢いよく伸び、カナさんは「刈っても刈っても追いつかない」と苦笑いを浮かべます。

魅力的な庭ですが、その手入れの大変さも民泊運営の現実です。
それでもカナさん姉妹は工夫を重ね、地元の人々とも協力しながら、一歩ずつ前に進んでいます。
TEAMRと双子姉妹の挑戦
民泊という形で家が再び生き生きとし、地域とつながる姿が印象的でした。
民泊化の準備で手を入れられた室内は、古さを活かしながらも居心地の良い空間になっていました。

「この家で過ごす時間が、訪れる人にとって特別な思い出になれば」という二人の思いが、随所に感じられます。
双子姉妹の挑戦は、常陸太田市に新しい風を吹き込みました。
TEAMRは、こうした空き家を活用し、地域の活性化につなげるための支援とネットワークづくりを担っています。
空き家の所有者と地域の人々をつなぎ、物件の再生を後押しすることで、放置された空き家が地域の資産へと生まれ変わる手助けをしています。
空き家は放置すれば地域の負担になってしまうこともありますが、人の思いと行動次第で、再び輝きを取り戻すことができるんです。
「誰かの休息の場になり、地域の人ともつながれる。そんな場所を増やしていきたい。」
二人の願いは、この家から始まり、やがて他の空き家や町にも広がっていくかもしれません。
ここから始まる物語は、常陸太田市だけでなく、地方の未来を明るく照らす可能性を秘めています。
TEAMR 運営サポートメンバー 鈴木 裕子
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