水戸市緑町。
偕楽園や歴史館が徒歩圏内にあり、文化の香りが残るこの街で、20年もの間、誰にも触れられず静かに時を止めていた一軒の空き家があります。

玄関横に積まれた錆びた自転車。
割れたバケツ。
ヘルメット。
無造作に置かれた古い置物。
一見すると、どこにでもある「よくある放置空き家」。

しかしこの物件こそ、TEAMRが「研修施設として活用したい」と決断した特別な一軒です。
通常なら、まず誰も借りない。
いや、正直に言えば、不動産会社なら “室内を見た瞬間に断る” レベルの物件です。
・大量の残置物
・雨漏り
・シロアリ確定
・給湯器
・配管は全滅
・庭の草木は建物に絡みつき
・空き家歴は20年
それでもTEAMRは、この家に価値を見出しました。
月1000円。ほぼ無償に近い条件で借りることにしたのです。
なぜ、この物件を研修施設に?
なぜ、こんなにも大きな課題を抱えた空き家が「未来の財産」になるのか?
今回の記事は、その理由を、現地で感じた“生の空気”とともにお届けします。
緑町を歩く。街の静けさと、どこか漂う“空白の時間”

現場へ向かう途中、車窓に流れる緑町の景色は心地よいものでした。
・偕楽園まで徒歩16分
・茨城県立歴史館まで徒歩7分
・アダストリアみとアリーナは徒歩2分
文化的な香りを持ちながら、落ち着いた住宅が続く。
大通りまでも徒歩3分と近く、生活の便利さもある。
小学校も徒歩11分、中学校も徒歩7分という距離感で、子育て世帯にも人気が高いエリアです。
緑町を歩くと、静かな住宅街の中に、古くから続く商店や地域の医院が点在し、
その一方で、スポーツ・イベントの中心となるアリーナが街に活気を与えています。
“派手ではないけれど、暮らしの心地よさがじんわり染み込んでくる場所”
それが緑町です。
だからこそ、この街の空き家が20年も眠り続けていたことは、
地域にとっても所有者さんにとっても、大きな「もったいない」ロスだったはず。
けれど今回、この空き家が
「TEAMRの学びの拠点」 として息を吹き返します。
「思ったほど荒れてはいない」でも、それが余計にもの悲しい。
玄関前に到着した瞬間、まず驚いたのは意外と整った外観でした。
外壁にはクラックがある。ベランダには伸びきった草木が絡む。
けれど“完全な廃屋”というほどではない。

ポストにはガムテープが貼られ、長い時間が過ぎたことだけが静かに語られていました。
玄関の引き戸を開けようとして、まず苦戦。
鍵がなかなか回らない。
金属同士が擦れる重い音。
20年という時間の厚みを、手のひらでそのまま感じました。
ようやく開いたその先には、薄暗い玄関。
そこに並べられた3足のスリッパ。
“ここに家族がいた”
その気配だけが、強烈に胸に刺さりました。
入った瞬間、わたしが感じたのは「怖い…」という正直な感情でした。

1階:薄暗い和室。開かない雨戸。孵化した卵。散らばった生活の痕跡。
玄関すぐ近くの6帖和室は、残置物が散乱し、照明も自然光もなく、部屋全体が沈んだ空気につつまれていました。

天井を見上げると、蜘蛛の巣。
雨戸を開けようとするも、枯れた草がサッシ部分に絡まり、びくともしません。
光が入らず、部屋は昼間でも真っ暗のまま。
雨戸の建具には、直径1センチほどの小さな卵の殻。
すでに何かが孵化し、外へ出て行った気配だけが残る。

背筋がぞわっとする。
しかしこれこそ、空き家の現実です。
今、この瞬間も、全国のどこかで同じ光景が生まれている。
キッチン・浴室:生活が止まったその日から、時計は動いていない

奥へ進むと、荒れたキッチンが現れます。
・空き缶
・空き瓶
・ペットボトル
・調味料の残骸
シンクにも床にも、当時の生活のまま残されていました。
浴室はさらに衝撃的でした。
洗剤・タオル・シャンプー。
すべてが「使いかけ」で時間を止めている。
洗面所には錆びて変色した金属スプレー缶。

物置には大量の段ボールが積まれ、湿気で紙が波打っていました。
これを片付けるだけでも、専門業者なら数十万円コース。
「普通なら断る物件」という言葉が、現実としてのしかかります。
2階:雨漏り跡、散乱した子ども部屋。2004年で止まったカレンダー。

階段を懐中電灯で照らしながら2階へ上がると、まず畳スペース。
そこにも雨漏り跡がしっかり残り、天井は黒ずみ、畳は湿気を吸って波打っていました。
さらに奥の部屋は、おそらく「子ども部屋」だったのでしょう。
・勉強机が2セット
・絵具セット
・CD
・フィギュア
・漫画
当時の生活がそのまま散らばり、誰にも片付けられず放置されている。
そしてさらに奥の部屋。
崩れかけた本棚が入口をふさぎ、大量のビデオテープ、日本人形、古い玩具が山のように積まれていました。
カレンダーは2004年。
そのページだけが、20年間ずっと同じ日付を示している。
「誰にも触れられなかった20年」
その重さに胸が詰まります。

絡みつく草木、散乱した廃材。

庭には室外機、物干し竿、はしごなどが無造作に散らばり、草木が家を飲み込むように絡みついていました。
外壁にははっきりとしたクラック。
見れば見るほど「簡単にはいかない物件」であることがわかりました。
所有者さんの背景
20年前に親御さんが亡くなり、そのままに…
今回の所有者さんは那珂市在住の70歳ほどの方。
親御さんが亡くなって20年。
そのまま手がつけられず、今日を迎えたそうです。
「どうしていいかわからなかった」
「気持ちの区切りがつかなかった」
空き家の背景には、必ず誰かの事情があります。
TEAMRが「この物件を借りる」と決めた理由
通常なら断る。
片付け・修繕にどれだけの費用がかかるのか、計算すら難しい。
それでもTEAMR代表の関さんはこう言いました。
「リアルな空き家で学べる環境は、何より価値がある」
TEAMRは、空き家の現場に強い組織です。
実際の活動では、常に“現実”と向き合わなければなりません。
綺麗な物件で研修をしても、現場では通用しない。
初めて空き家を担当する人でも、
「これは危険」
「これは典型的な残し方」
「これは片付けにどれくらいかかるか」
そんな判断ができるようになる。
そのために必要なのは、本物の空き家。
ここ以上に適した場所はありません。
この物件は、これから「TEAMRの学びの場」になる
誰にも触れられなかった20年。
静かに時間を積み重ねただけのこの家が、これからはチームの学びの場になります。
・残置物の片付け方法
・雨漏りの調査方法
・シロアリ被害の見極め方
・古い配管の危険度
・現場での判断のポイント
実践的に学べる“リアルな生きた教材”になるのです。
「空き家問題は、現場でしか分からない」
今回の物件を見て改めて感じたことがあります。
空き家は、写真では分からない。
書類では分からない。
現場に立った人だけが知る“重み”がある。
だからこそ、TEAMRの存在価値がある。
だからこそ、この研修施設に意味がある。
空き家問題は、待ってくれません。
住む人がいなくなっても、家は朽ち、倒れ、周囲に影響を及ぼす。
でも逆に言えば、
誰かが一歩踏み出せば、家は必ずまた動き出す。
TEAMRに入るというその一歩が、
誰かの空き家を救い、地域を守り、未来の暮らしを明るくする。
「やるなら、現場で学ぶしかない」
研修施設となるこの空き家は、
ある人にとっては「負の遺産」だったかもしれません。
けれどTEAMRにとっては「未来への投資」です。
空き家問題を本気で学びたい。
地域を守りたい。
困っている人の役に立ちたい。
そんな想いを持つ仲間とともに、この家で学べる。
この家からスタートできる。
空き家のリアルが詰まった水戸市緑町の空き家は、
これからTEAMRの「学びの場」として生まれ変わります。
もし、空き家の現場で学びたいと思っているなら、ぜひ、TEAMRの門を叩いてください。
TEAMR 運営サポートメンバー 鈴木 裕子
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