
「本当に、ここで合ってる!?」
鹿島臨海鉄道・大洗駅から徒歩12分。
地図を片手に歩きながら、私は何度も足を止めました。
大洗磯浜町。
観光地として知られる大洗ですが、駅から少し離れると、昔ながらの住宅地が広がっています。
整った「ようこそ通り」から一本入ると、道は急に細くなり、車はもちろん、人がすれ違うのもやっとな路地が続いていました。
今回取材した空き家は、その路地の奥にありました。
大洗磯浜町という街

大洗磯浜町は、海と暮らしの距離がとても近い街です。
大洗サンビーチまでは徒歩16分、明太パークへは徒歩13分。
ゆっくら健康館は徒歩4分という立地です。
大洗駅、小学校、中学校、スーパー、コンビニも徒歩圏内にそろっており、生活の利便性は高いエリアです。

一方で、町を歩くと、長く人が住んでいない空き家にも数多く出会います。
大洗町の「空家等対策計画」によると、町全体で200件以上の空き家等が確認されており、磯浜町や大貫町は空き家が比較的多い地域とされています。
観光地としての顔と、生活の場としての顔。
そして、空き家という課題。
磯浜町は、それらを同時に抱えている街です。
現場は、すぐには見つかりませんでした
現場の場所はなかなか分からず、TEAMR本部のカナさんに連絡し、やっとのことで探し当てることに成功。
あやうく違う家に乗り込むところでした。汗
地図上では道があるはずなのに、「この先に本当に家があるのだろうか」と感じるほど狭い路地です。

何度も行ったり来たりし、同じ場所を何度も歩きました。
数件先には、屋根が崩れ、外壁も傷み、かなり老朽化した空き家がありました。
「この一帯も、放置すれば同じ状況になってしまうのだろうか」
そんなことが頭をよぎります。
外観から感じた「きちんと手を入れている家」
木造2階建、築1980年。
決して新しい建物ではありません。
それでも、外壁はリフォームされており、古いながらも手入れされながら暮らしていた印象を受けました。

長年放置されて荒れた空き家とは違い、「これから人が住む家」として整えられていることが分かります。
駐車場はありませんが、少し離れた場所に、所有者さんが経営している美容室があり、そこに無料で駐車できるとのことでした。
地域ならではの柔軟な対応です。
家と家の距離は非常に近く、二階の窓からは隣家の屋根や窓がすぐそばに見えます。
都市部とも、郊外とも違う、港町ならではの生活距離感を感じました。

最初に出迎えてくれたのは、昔ながらの玄関

玄関は昔ながらの引き戸。
現場に到着したとき、玄関の扉は開いており、たたきには一足の靴が置かれていました。
すでにハウスクリーニング業者さんが室内で作業をされているよう。
挨拶をして取材の可否を伺うと、快く了承してくださいました。
玄関に入ると、昔ながらの下駄箱がお出迎え。
華やかさはありませんが、「きちんと暮らすための家」であることが自然と伝わってきます。
ダイニングキッチンと、現場の空気

ダイニングキッチンでは、ハウスクリーニング業者さんが換気扇の清掃作業をしていました。
寒い中でも、丁寧に、黙々と作業を進めています。
床は花柄のビニルシート。
ガラスの引き戸を開けると、隣の和室と一体で使える造りになっています。
キッチンは昔ながらのデザインですが、磨き込まれたシンクや換気扇からは清潔感が感じられました。
「次に住む人のために整えている」
そんな現場の想いが伝わってきます。
光を大切にした住まい

廊下にも窓があり、家全体に光を取り込む工夫がされています。
1階の和室の障子は下部がガラス張りで、やわらかく光を通します。
8畳の和室には大容量のクローゼットがあり、畳はみらい不動産さんによって張り替え済みです。

トイレはピンクのタイルが印象的な昔ながらのデザインですが、清潔感がありあす。

浴室はユニットバスにリフォームされ、洗面台も比較的新しいものが設置されていました。

すべてを新しくするのではなく、
使える部分は活かし、必要なところにだけ手を入れる。
空き家再生として、現実的で誠実な選択だと感じました。
二階の様子と収納力
階段を上がると、まず約3畳の収納部屋があります。
造り付けの棚があり、使い勝手が良さそうです。

二階のトイレは新しく、清潔感があります。
廊下にも窓があり、床の一部はガラス張りで、ここでも光を取り込む工夫が見られました。
和室と洋室はそれぞれ6帖。
畳は張り替えられており、引き戸は中央がガラス張りの木製引き戸です。
壁や天井もきれいで、丁寧に整えられていることが分かります。

洋室にはバルコニーがありますが、隣家がすぐそばにあるため、眺望は限られています。
それでも、洗濯物を干すには十分なスペースです。

所有者さんが下した決断
この家の所有者さんは、親御さんが亡くなり、相続された息子さんです。
近所に住み、美容室を経営されています。
ご自身で家財の片付けをしていた際、タンスに足をぶつけて骨折してしまいました。
「もう自分では無理だ」
そう感じたことが、みらい不動産へ相談するきっかけだったそうです。
空き家問題は、時間と体力、そして気持ちの問題でもあります。
先延ばしにしているうちに、負担は確実に大きくなっていきます。
反響数だけでは測れない、この物件の価値
この物件は、反響自体はそれほど多くありませんでした。
しかし、結果的には早い段階で入居が決まりました。
入居者は3人家族の外国の方です。
日本語が話せるのは息子さんのみで、契約や説明には多くの配慮が必要だったそうです。
それでも、
「暮らせる住まいが見つかった」という事実は、ご家族にとって何よりも大切なことでした。
数字で見る空き家再生の現実
賃料:60,000円
修繕費用:約65万円
・残置物撤去・ハウスクリーニング:約35万円
・畳、水道、給湯器整備:約30万円
決して小さな金額ではありません。
しかし、放置し続けることによるリスクや負担を考えれば、現実的な選択だと言えます。
賃料6万円の場合、年間の家賃収入は約72万円になります。
今回の修繕費用約65万円は、単純計算でも1年程度で回収できる水準です。
もちろん、大きな利益が出る投資ではありません。
それでも、建物を「使える状態」に戻し、誰かの生活の場として再び動かすことができた点は大きな成果です。
一方で、もしこのまま放置していれば、管理の手間や近隣への配慮、将来的な修繕費の増加など、目に見えない負担が積み重なっていた可能性もあります。
空き家再生は「儲かるかどうか」だけで判断するものではなく、
負担をコントロールし、リスクを減らす選択 でもあるのだと感じました。
TEAMRの現場に立つということ
この物件は、「誰にでも簡単に貸せる家」ではありません。
道は狭く、駐車場もなく、隣家との距離も近い。
それでも、だからこそTEAMRの役割があります。
現場を見て、
所有者さんの話を聞き、
「どうすれば次につなげられるか」を考える。
TEAMRは、空き家を単なる物件としてではなく、
人の暮らしと決断を含めて引き受けるチームです。
おわりに

路地の奥にあった一軒の空き家。
誰も関わらなければ、数件先の老朽化した空き家と同じ道をたどっていたかもしれません。
しかし今、この家には新しい暮らしが始まろうとしています。
TEAMRの現場は、決して派手ではありません。
それでも、確実に、町の未来を少しずつ変えています。
「空き家に関わる仕事がしたい」
「現場で、本当に役に立ちたい」
そう感じた方には、ぜひ一度、TEAMRの現場に立ってほしいと思います。
TEAMRは、現場で共に踏み出す仲間を待っています。
TEAMR 運営サポートメンバー 鈴木 裕子
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