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「まだ売りたくない」から始まった空き家活用【TEAMR現場レポート水戸市堀町】

「空き家」と聞いて、どんな家を思い浮かべますか?

伸び放題の雑草、道路まで張り出した庭木、色あせた外壁、長い間誰も出入りしていない玄関。

そんな「ひと目で空き家と分かる家」を想像する方も多いのではないでしょうか。

今回、TEAMRとして取材に訪れた茨城県水戸市堀町の一軒家は、そんなイメージとは少し違いました。

庭はきちんと管理され、雑草もほとんどありません。外観にも大きく傷んだ様子はなく、室内に入ると明るい和室や洋室が続きます。キッチンや浴室、トイレなどの水回りも、まだ十分使えそうです。

閑静な住宅地に建つ、築48年の空き家

昭和52年12月築。築48年を超える木造住宅です。

決して新しい家ではありません。

それでも現場を歩いていると、

「ここなら、まだ誰かが暮らせる」

そう思える家でした。

空き家問題は、ボロボロになった家をどうするかだけではありません。

まだ使える家を、使えるうちにどう次へつなぐか。

今回の物件には、そんな空き家活用のヒントがありました。

小中学校も図書館も徒歩圏内。水戸市堀町の7K

今回の物件は、水戸市堀町の閑静な住宅地にあります。

物件概要は次のとおりです。

  • 所在地:茨城県水戸市堀町
  • 交通:赤塚駅まで車で約9分、水戸駅まで車で約20分
  • 間取り:7K
  • 構造:木造2階建て
  • 築年月:昭和52年12月
  • 延床面積:127.52㎡

スーパーマーケットまでは車で約6分。小学校まで徒歩約10分、中学校まで徒歩約8分、西部図書館までは徒歩約7分、総合病院までは車で約9分です。

円形ドーム型の特徴的な水戸市立西部図書館 出典:水戸市「水戸市立西部図書館」

駅近ではありませんが、車があれば日常生活に必要な施設へアクセスしやすく、小中学校が徒歩圏内なのも魅力です。

一方、現地へ行ってすぐに気づいたこともありました。

道路が狭い。

さらに駐車スペースは1台分で、私自身も車を停めるのに少し苦労しました。

こうしたことは、地図や間取り図だけを見ていても分かりません。

道路の幅、車の出し入れ、隣家との距離、日当たり、周囲の雰囲気。

現場へ行くことで初めて分かることがあります。

8段ほどの階段を上ると、きれいに管理された庭

左:道路から敷地へと続く階段 右:除草シートが敷かれ、きれいに管理されている南側の庭

敷地は道路より1mほど高い位置にあります。

道路から8段ほどの階段を上がると、庭と玄関があります。

そこで最初に驚いたのが、雑草の少なさでした。

庭には除草シートが敷かれ、外周には庭木が植えられています。枝が道路や隣地へ大きく越境している様子もありません。

空き家の現場では、庭の管理状態だけでも家の印象が大きく変わります。

人が住まなくなっても、雑草や庭木は伸び続けます。放置すれば、ほんの数か月でも「管理されていない家」という印象になってしまいます。

今回の家からは、いわゆる「おんぼろ空き家」という雰囲気をあまり感じませんでした。

むしろ、

「少し前まで、ここで誰かが普通に暮らしていたんだろうな」

という印象です。

空き家は、誰も住まなくなった瞬間に壊れるわけではありません。

管理されない時間が積み重なることで、少しずつ「住める家」から遠ざかっていきます。

だからこそ、まだ状態が良いうちに次の使い方を考えることが大切なのだと思います。

銀色の玄関扉の先に残っていた暮らし

銀色の玄関扉とその内部
レトロなタイルが印象的な玄関 出入りをサポートする手すりも設置されている

銀色の玄関扉を開けると、レトロな玄関タイルが目に入りました。

玄関は2畳ほどあり、ゆったりしています。手すりも設置されていました。

玄関を上がると、奥へ廊下が続きます。

長く続く廊下と日当たりのよい和室

まずは6帖の和室。

南側に窓があり、明るい部屋です。

そのまま8帖の洋室、さらに6帖ほどの洋室へとつながっています。

部屋がひと続きになっており、使い勝手がよさそう

それぞれが完全に独立しているというより、部屋同士につながりがあり、建具を開ければ広い空間として使えそうです。

一番奥の洋室の向かい側にはキッチンがあります。

日が当たり心地よいキッチン

使用感はあり、壁紙にはしわが寄っているところもありますが、設備自体はまだ使えそうでした。

キッチン壁紙のしわを発見

キッチンにも光が入り、明るい印象です。

古い家を再生するとき、すべてを新品にすることが正解とは限りません。

まだ使えるものは残す。

必要なところに手を入れる。

「古いから交換する」のではなく、「今あるものをどう生かすか」を考える。

それも空き家再生の大切な視点です。

水回りもきれい。「築48年」だけでは分からない家の状態

廊下の奥には、洗面台、洗濯機置き場、浴室があります。

洗面台には使用感がありますが比較的きれいです。浴室も清潔感があり、自動湯沸かし器や比較的新しいシャワーが設置されていました。

トイレも新しめで、左右には手すりがあります。

さらに1階には、4帖ほどのウォークインクローゼットと物入れもありました。

階段を上がると、2階には和室1室と洋室3室、計4部屋。

6帖の和室は畳も壁もきれいです。洋室も床や壁の状態が良く、ベランダへ出られる部屋もあります。

2階6帖の和室
2階洋室
左:フローリングの洋室 右:カーペットの洋室

最後の洋室は少し小さめで、カーペット敷きでした。

1階を見た時点でも広いと感じていましたが、2階を歩いて改めて思いました。

「この家、広いな」

7K、延床面積127.52㎡。

子どもが複数いる家庭、在宅ワークをする人、趣味の部屋が欲しい人など、部屋数を必要とする家庭には、この広さそのものが魅力になります。

新築と比べれば、当然古さはあります。

しかし、家の価値は築年数だけでは決まりません。

「この家なら、どんな暮らしができるだろう」

そんな視点で見ると、古い家にも違った価値が見えてきます。

広い庭で家庭菜園も楽しめそう

雑草が少ない裏庭
南側の庭 手すりが設置してある

室内を見たあと、もう一度庭へ出ました。

やはり印象に残ったのは、雑草がほとんどないことです。

空き家の庭を管理した経験がある人なら、このありがたさが分かるのではないでしょうか。

草を刈り、枝を切り、落ち葉を片付ける。

それだけでも時間と人手、費用がかかります。

この家は庭も比較的広く、家庭菜園をしたり、花を育てたりすることもできそうです。

何もないところに新しい価値をつくることだけが「再生」ではありません。

すでにそこにある良さを見つけることも、空き家再生です。

「まだ売りたくない。でも、自分では管理できない」

この家が空き家になった背景には、所有者さんの事情がありました。

所有者さんは現在、神栖・鹿島方面に住んでおり、水戸市にあるこの家を日常的に管理することが難しい状況でした。

しかし、

「今すぐ売りたい」

というわけではありません。

まだ売りたくない。でも、自分では管理できない。

そこで、みらい不動産へ相談がありました。

空き家になったら売る。

使わないなら壊す。

選択肢はそれだけではありません。

「手放す決心はついていない。でも、このまま空き家にしておくのも心配」

そんな所有者さんは、全国にたくさんいるのではないでしょうか。

現在、この物件は所有者さんとの契約期間が残り約2年となっています。

家をすぐに手放すのではなく、誰かに使ってもらいながら建物を維持する。

それも一つの空き家活用です。

「人が住んでいるから安心」とも限らない

この家には以前、入居者さんがいました。

その方は虫がとても苦手だったそうで、虫の侵入を防ぐため、換気扇などの開口部をふさいでしまっていました。

その結果、室内に湿気がこもり、カビが多く発生してしまったそうです。

この話も、空き家活用を考えるうえで大切なことを教えてくれます。

「入居者が決まったから終わり」

ではありません。

人が住んでいても、使い方によって建物が傷むことがあります。

貸したあとも家の状態を見て、問題があれば早めに対応する。

空き家を活用することと、建物を管理することはセットなのだと思います。

この家は「ボロボロになる前」に次へつながった

今回の取材で最も印象に残ったのは、この家にまだ十分な「暮らせる力」が残っていることでした。

道路は狭い。

駐車場も広くない。

敷地へ上がる階段もある。

壁紙には傷んでいるところもある。

決して完璧な家ではありません。

それでも、明るい部屋があります。

7つの居室があります。

広い庭があります。

学校や図書館が歩いて行ける距離にあります。

水回りも比較的きれいです。

そして何より、ここで誰かが暮らす姿を想像できます。

もしこの家が、このまま何年も使われなかったらどうなるでしょうか。

雑草が伸び、庭木が越境し、室内に湿気がたまり、設備が劣化する。

小さな不具合に誰も気づかず、いざ使おうとしたときには、多額の修繕費が必要になっているかもしれません。

空き家再生は、ボロボロになった家を救うことだけではありません。

ボロボロになる前に、次の人へつなぐことも空き家再生です。

一軒の空き家に、一人では解決できない問題がある

空き家の事情は一軒ずつ違います。

相続。

登記。

売却。

賃貸。

修繕。

残置物。

庭の管理。

近隣との関係。

今回のように「まだ売りたくない」という所有者さんの気持ちもあります。

だから、空き家問題を一人ですべて解決するのは簡単ではありません。

不動産に詳しい人。

建築に詳しい人。

法律に詳しい人。

片付けができる人。

庭を整えられる人。

地域を知っている人。

そして、所有者さんの話を聞き、

「この家をどうすれば、もう一度使えるだろう」

と考える人。

それぞれの力が必要です。

TEAMRが大切にしているのも、そんな「つながり」です。

誰かにとって当たり前の知識や経験が、別の誰かにとっては、一軒の空き家を動かすために欠かせない力になることがあります。

まだ使える家を、使えるうちに

南側からみた空き家外観

取材を終えて、狭い道路を通りながら帰るとき、改めてこの家のことを考えました。

昭和52年に建てられた一軒家。

銀色の玄関扉。

レトロなタイル。

南から光が入る和室。

使い込まれたキッチン。

手すりのあるトイレ。

2階に並ぶ4つの部屋。

そして、きれいに管理された庭。

新しい家ではありません。

でも、まだ使えます。

「ここなら、まだ誰かが暮らせる」

そう思えるうちに次へつなぐことができれば、家はもう一度役割を持つことができます。

全国には、こうした家がまだたくさんあります。

そして、その一軒一軒に違う事情があります。

TEAMRが目指しているのは、1万棟の空き家にもう一度役割をつくることです。

もちろん、一人ではできません。

不動産、建築、法律、片付け、DIY、地域活動、情報発信。

それぞれの得意なことを持つ人がつながるからこそ、できることがあります。

空き家問題を「誰かが解決する問題」で終わらせない。

「自分にもできることがあるかもしれない」

そう思う人が一人増えることも、空き家再生の始まりなのだと思います。

一軒の空き家から、地域のこれからを変えていく。

TEAMRは、今日もその答えを現場で探しています。

 

TEAMR 運営サポートメンバー 鈴木 裕子

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