水戸市西部に位置する双葉台。
整然と区画された道路に戸建住宅が並び、街路樹や小さな公園が点在する、落ち着いた住宅街です。
今回、TEAMRサポートメンバーyukoが訪れたのは、そんな双葉台2丁目にある一軒の空き家でした。

現地に到着してまず目に入ったのは、どっしりと構える立派な日本家屋でした。
昔ながらの引き戸の玄関、二間続きの和室、美しい欄間、庭に面した縁側。
そして和室の柱には、かつてこの家で暮らした子どもの身長が記されていました。
築48年。
決して新しい家ではありません。
しかし、「古い家」と「もう使えない家」は同じではありません。
今あるものを生かしながら必要なところに手を入れれば、空き家はもう一度、誰かの暮らしの場所になることができます。
今回は、次の住人を迎える準備が進む双葉台の現場を取材しました。
昭和50年代につくられた、整った住宅街・双葉台
今回の物件があるのは、水戸市双葉台2丁目です。
双葉台地区は水戸市西部に位置し、1978(昭和53)年ごろに大規模な宅地整備によって形成された住宅地です。
実際に現地を歩いてみると、まず印象に残ったのが、きれいに整った街並みでした。
道路と敷地が計画的に区画され、街路樹や小さな公園も整備されています。
昔から自然に住宅が増えていった地域というよりも、「ここで暮らす」ことを考えてつくられた住宅団地という印象を受けました。
今回の物件からは、スーパーマーケットまで車で約4分。保育園は徒歩約3分、県立こども病院と総合病院は徒歩約7分、グループホームは徒歩約1分です。
小学校までは徒歩約23分、中学校までは徒歩約26分。
JR赤塚駅までは車で約11分、JR水戸駅までは車で約25分です。
車を中心とした生活にはなりますが、買い物施設だけでなく、医療・福祉施設が身近にあるのは双葉台の特徴といえるでしょう。
住宅地の中には公園や緑もあり、落ち着いた住環境が広がっています。
約50年を迎えた住宅団地で進む「世代交代」
一方、双葉台を歩いていると、気になる光景もありました。
「ここは空き家かな?」
そう感じる住宅が、ところどころに見られたのです。
双葉台が形成されたのは昭和50年代。
当時ここに家を建て、子育てをしていた世代も年齢を重ねました。
子どもたちが独立し、親世代が高齢になる。
施設への入所や相続などをきっかけに、住む人がいなくなる住宅も出てきます。
ただし、空き家ばかりが増えているわけではありません。
街を歩いていると、古い住宅を建て替えたと思われる新しい家も見つけました。
長く住み続けられている家。
住む人がいなくなった家。
そして、新しく建て替えられた家。
双葉台は今、最初の世代から次の世代へと、少しずつバトンが渡されている途中なのかもしれません。
だからこそ、すべての古い住宅を取り壊すのではなく、まだ使える住宅をもう一度地域へ戻していくことにも意味があるのではないでしょうか。
1978年築、130㎡を超える5DKの日本家屋
今回訪れた物件は、1978年3月築の木造2階建て。
間取りは5DK、延床面積は130.47㎡あります。
この家が建てられたのは、双葉台の街が形成され始めた時期とほぼ同じです。
つまり、この住宅もまた、双葉台の街と一緒に約半世紀の時間を重ねてきた一軒といえます。
現地に到着したときの第一印象は、
「立派な日本家屋だな」
というものでした。
取材当日は、ちょうど業者さんが作業をしているところでした。
玄関をきれいに清掃し、これからキッチンや廊下などにもワックスをかける予定とのこと。
誰も住んでいなかった家が、次の住人を迎えるために少しずつ整えられていました。
庭を一周。玄関前には3つの立派な庭石

まずは建物に入る前に、庭をぐるりと一周しました。
玄関前で目を引くのは、3つの立派な庭石です。
昔ながらの日本家屋と庭石がよく似合い、この家が建てられた当時の面影を感じさせます。
庭木はすでに伐採され、雑草もきれいに取り除かれていました。
空き家は、人が住まなくなると庭木や雑草が伸び、それだけで「管理されていない家」という印象が強くなってしまいます。
しかし、この家は外回りがすっきりと整えられており、暗い印象はありません。
敷地内には大きな物置が一つあり、駐車スペースは1台分確保されています。
昔ながらの引き戸を開けると、広々とした玄関

玄関は昔ながらの引き戸です。
扉を開けると、およそ2帖ほどありそうな広い玄関が現れました。
玄関ホールにもゆとりがあります。
最近の住宅では、居室を広く確保するために玄関や廊下をコンパクトにすることも多いため、この余裕のあるつくりは昔の住宅ならではの魅力です。
玄関ホールを進むと、ダイニングキッチンがあります。

設備には昔ながらの雰囲気が残っていますが、きれいに手入れされ、清潔感があります。
庭に面した窓から光が入り、室内がとても明るいのも印象的でした。
最新のシステムキッチンではありません。
それでも実際にその場に立つと、「ここならまだ十分に暮らせる」と感じます。
すべてを新品にしない。必要なところに手を入れる
キッチンの隣にはトイレがあります。
もともとは和式だったものに洋式便座を設置し、壁紙や床もきれいに張り替えられていました。

さらに廊下を進むと、洗面所と浴室があります。
洗面台は新品ではありませんが、きれいに使われていたことがわかります。
浴室は昔ながらの在来工法。
薄いピンク色のタイルが、今見るとかえってかわいらしく、どこか懐かしさを感じさせます。
一方、追い焚き機能やシャワーなど、暮らしに必要な設備には手が加えられています。

この家で印象的だったのは、何でも新品に交換しているわけではないことです。
まだ使えるものは使う。
必要なところは直す。
きれいにすれば生かせるものは、きれいにして残す。
古い空き家を再び活用するうえで、この「見極め」はとても大切です。
この家の魅力が詰まった、二間続きの和室
そして、今回の物件で最も印象に残ったのが1階の和室でした。

目を引くのは、美しい欄間です。
今の住宅ではなかなか見ることのできない、昔ながらの意匠が残っています。
襖を開ければ二間続きの広々とした空間になり、その先には庭に面した縁側があります。
和室、縁側、庭がゆるやかにつながることで、とても開放感があります。
襖を閉めればそれぞれの部屋として使い、開ければ家族や親戚が集まれる大きな空間にすることもできます。
こうした使い方の柔軟さも、日本家屋ならではの魅力でしょう。
そして、和室の柱には、この家が歩んできた時間を感じさせるものが残されていました。
子どもの身長を記した跡です。

「ここまで大きくなった」
「去年より伸びたね」
かつて、この柱の前でそんな家族の会話があったのかもしれません。
不動産情報だけなら、この住宅は「1978年築・木造2階建て・5DK・130.47㎡」と表すことができます。
けれど、家は数字だけではありません。
そこには誰かが暮らし、家族が時間を積み重ねてきた記憶があります。
130㎡の広さを生かして、暮らし方は自由に

1階の一番奥には、日当たりのよい洋室があります。
独立した個室なので、寝室としてはもちろん、在宅ワークの仕事部屋としても使いやすそうです。
2階には和室1室と洋室1室があります。

襖で仕切られているため、それぞれ個室として使うことも、襖を開けて広い空間として利用することもできます。
130.47㎡という広さと5DKの間取りがあるため、家族それぞれの個室を確保したり、仕事部屋や趣味の部屋をつくったりと、さまざまな暮らし方が考えられます。
さらに今回の住宅は、ペット可、DIY可。
古い家だからこそ、「自分たちの暮らしに合わせて手を加えながら住む」という楽しみ方もできそうです。
月額59,000円で、新しい住人を募集中

現在、この住宅は賃貸物件として新しい住人を募集しています。
月額賃料は59,000円。
敷金なし、礼金1.5か月、保証金0.5か月です。
保証人不要で、ペット可・DIY可。都市ガスにも対応しています。
築年数だけを見れば、決して新しい住宅ではありません。
しかし、130㎡を超える5DKの広さがあり、縁側や二間続きの和室など、今の住宅には少なくなった魅力が残っています。
新築のような「完成された家」に住むのではなく、古い家の良さを楽しみながら、自分たちらしい暮らしをつくっていく。
そんな住まい方を求める人にとって、選択肢のひとつになるのではないでしょうか。
「古い家」ではなく、「まだ使える家」として見る
今回の現場を歩いて、改めて感じたことがあります。
それは、「古いこと」と「使えないこと」は同じではないということです。
築48年という数字だけを見れば、「かなり古い家」と感じるかもしれません。
しかし、実際に現場へ行けば、明るいダイニングキッチンがあり、広い玄関があり、美しい欄間や縁側があります。
そして必要な部分には手が加えられ、再び人が暮らせる状態へと整えられています。
空き家活用で大切なのは、「古いから壊す」と最初から決めてしまうことではありません。
まず現場を見る。
建物の状態を確認する。
残せるものと、直すものを見極める。
そして、その家に合った次の使い方を考える。
この家は、その大切さを改めて教えてくれる一軒でした。
一軒の空き家を動かすことが、街の未来につながる
双葉台のように昭和40~50年代につくられた住宅団地は、これから本格的な世代交代を迎えます。
その中で、使われなくなった家をすべて取り壊してしまうのではなく、まだ使える住宅を次の人へつないでいく。
それも、街を次の世代へ引き継ぐ方法のひとつです。
誰かにとって役割を終えた家が、別の誰かにとっては新しい暮らしの場所になるかもしれません。
TEAMRが取り組んでいるのは、そんな空き家の可能性を見つけ、再び地域へつないでいく「空き家Re活用」です。
空き家を動かすためには、所有者と話す人、建物を見る人、修繕する人、庭を整える人、入居者を探す人など、さまざまな力が必要です。
一人では難しいことも、TEAMならできる。
だからこそ、私たちはTEAMRとして空き家に向き合っています。
今回の家の柱には、かつてここで育った子どもの身長が残っていました。
そしてこれから、この家には新しい住人が入り、新しい暮らしが始まるかもしれません。
古いから終わりにするのではなく、残せるものを残しながら次へつなぐ。
一軒の空き家に、もう一度命を吹き込む。
TEAMRが掲げる「10万棟の空き家に命を吹き込む」という大きなビジョンも、その始まりは目の前にある一軒の空き家です。
空き家問題に関心がある。
地域のために何かしてみたい。
不動産や建築、リフォーム、福祉、士業など、自分の仕事や経験を空き家の活用につなげたい。
そんな一人ひとりの力が集まれば、まだ救える家はもっと増えていくはずです。
双葉台のこの家も今、約半世紀の時を経て、次の暮らしへ向けて動き始めています。
TEAMR 運営サポートメンバー 鈴木 裕子